多形性紅斑
*概要
犬にはまれに発生する急性の皮膚疾患。四肢や腹部、粘膜部等に丘疹や点状の紅斑ができ、次第に拡大、増数し、しばしば癒合して大きい皮疹と小さい皮疹が混在する。時に紅斑の中央に水疱や出血が発生することもある。
ごんの場合は最初は、なんか顔や目が赤くなってきたな〜という状態でしたが、3日〜4日で症状はどんどん進んで、かなりひどい状態になりました。耳、皮皺、口内は真っ赤にただれて、水泡ができて出血も伴うようになっていました。 |
*病因
発症誘因としては薬剤、感染、食物などの報告があります。しかしながら、正確な発生機序については明確になっていません。免疫複合体が関与したV型アレルギー反応とも言われています。
ハッキリした原因はいまだ不明だそうですが、ごんの場合、大学病院からの回答では抗癲癇剤のフェノバールに反応して発症してしまったようです。 |
*発症部位
発症部位としては、脇や下腹部(66%)、皮膚粘膜移行部(48%)、口腔粘膜(32%)、耳介(25%)、肉球(21%)等と
されています。
ごんの場合は、最もひどかったのが口腔粘膜でした。それ以外にも耳、皮皺、口周りも潰瘍と出血を伴うものでした。 |
*治療方法
原因薬剤の排除で、薬剤排除後1〜2週で改善する例が多いとされています。
ごんの場合、診断は発症部位の皮膚組織を採取して病理検査をしたのですが、多形性紅斑の診断が出たのは死後5日後のこと
でした。ただ大学病院での診断後ステロイドの量をかなり増やしたのですが、その結果か、目、鼻、舌、肛門等に症状はかなり改善されてきてました。 |
以下は大学病院からの回答内容です。
本疾患は抗生物質での発症報告が多く、実のところ、フェノバールでの発症報告についても少ないながらもあるようで、今回はェノバールに起因するものと考えられます。したがって、フェノバールを排除することによって皮膚や粘膜の病変、呼吸状態の改善などが得られた可能性があります。抗癲癇薬としては、犬においてジアゼパムが第二選択薬とされていますが、血中半減期が短いため(効果がフェノバールと比較し弱く、一日3〜4回の投与が必要)、発作の頻度や飼い主さんの負担を考慮すると本薬剤は補助的な薬剤とするほうが良いと判断いたしまた。その他にも犬に使用される抗癲癇薬は2〜3種類あり、ごんちゃんの場合は申し訳ありませんが、薬剤の組み合わせ次第でもっと良いQOLが期待できたかもしれないのは事実です。
しかしながら、フェノバールは血中濃度が早期に上昇することや、血中濃度の半減期が比較的長い点から、抗癲癇薬の第一選択薬であり、QOLの改善を考慮すると、残念ながら若干の犠牲はあっても投薬は中止できない薬剤であったものと思われます。当初から脳炎があったことと皮膚の免疫疾患を考慮していたことから、プレドニゾロン(ステロイド)を免疫抑制量(2mg/kg
以上)まで投与することによって神経症状や皮膚の病変については、ある程度改善できるものと考えていました。 つい先日の土曜日にも、脳炎と診断した他のパグの飼い主さんから、亡くなりましたとの電話をいただきました。診断し、わずか2〜3週のことと思います。パグ以外の犬種では、完治は困難なものの、薬剤に対する反応がよく、元気に6ヶ月以上生存するものが多いのですが、治してあげられないのは犬にとっても、飼い主さんにとってもまことに残念なことです。
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