パグ脳炎・・・・・非化膿性壊死性髄膜脳炎
(Necrotizing Meningoencephalitis)
*概要
・脳実質の広汎にわたる壊死、囲管性細胞浸潤、髄膜炎等が見られる慢性非化膿性脳炎と定義される。
・簡単に言えば、脳全体にわたって壊死等の炎症がおこる、慢性的な脳疾患ということらしいです。 |
・最初に報告された症例がパグであったことやパグに発生が多いことから、一般的にパグ脳炎と呼ばれている。しかし同様の疾患はマルチーズやヨークシャテリアでも報告がされている。
・名前からパグ特有と思ってましたが、パグに多いと言うだけでパグ特有ではないようです。
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・発症年齢は6ヶ月〜7歳齢までであるが、大半は5歳齢までの比較的若いうちに発症することが多い。
・若犬に発症することが多いようです。5歳を過ぎればパグ脳炎に罹患する確率はかなり低くなるということですね。 |
・発症は明らかな前兆等が見られることはなく、痙攣、癲癇様発作、失禁等の症状で突然起きることが多い。
・ごんの場合、遊んでいて突然、激しい痙攣が起きました。その後も癲癇様発作や痙攣が頻発しました。 |
・予後は非常に悪く、発症後、早い場合には数日、長くても半年程度で亡くなってしまう。
・ごんの場合には発症してから5週間で亡くなりました。 |
*病因
明確な原因は不明であり、家族的傾向(遺伝)、ウイルス要因等諸説あり、そのなかでも何らかのウイルスが起因となるという説が最も強かった。が、近年の研究では、大脳内に萎縮した神経細胞と肥大化したアストログリア(星状膠細胞)が認められ免疫染色で陽性を示していたことから、自己免疫性疾患では無いかという説が有力視されているが確定はされていない。
遺伝的、家族的要因の可能性
自己免疫性疾患が有力視されてはいるが、壊死性脳炎がパグに多い点を考慮すると遺伝的素因は否定できない。パグに発症する本脳炎は、カルフォルニア州サクラメントで多く発生した報告が最初である。しかしながら、血縁関係にないパグについても発症が多く認められている点からも、詳細な遺伝様式についてはわかっていない。また、本症がウイルスや細菌といった感染性疾患ではなく、自然発症していることも家族的素因が疑われる点の1つといえる。
基本的にどんな犬種でも特異的ではないが遺伝的素因を示唆する病気は認められる。ゴールデンレトリーバーでの股関節形成不全症がその一例で、股関節形成不全の犬が繁殖には適さないのは明白な事実である。遺伝的要素が多少でも疑われる疾患を持つ場合には繁殖に使用するべきではないと考える。
ハッキリした原因はいまだ不明だそうですが、最近の説では自己免疫性の疾患ではないかといわれているようです。
動物の体に
は自分を守る為の免疫性があり、例えば体内にウイルス等が侵入した場合等にこれらを倒そうとするのですが、これが自分の体の
一部である大脳の細胞を攻撃してしまうということらしいです。 ただ、この疾患がパグに多いことから遺伝的な要素は否定できない
ということですね。できるのであれば繁殖する場合には家族系列を調べてパグ脳炎が発症したラインでの繁殖は避けることで発症
の可能性は低くなるのではないのでしょうか。 |
*症状
癲癇様発作、痙攣、旋回運動等を含む運動失調、視覚障害等でこの疾患特有の症状は報告されていない。
よくいわれる癲癇の様な発作、同じところをグルグル歩き回る徘徊等がおきるようですが、これらはパグ脳炎固有の症状ではない
ようです。その他に報告されている症状としては、運動障害、暗い所を好む、四肢の小刻みな痙攣、性格変化があるそうです。
同じような症状をおこす病気としては、癲癇、脳への細菌感染、 ジステンパ、トキソプラズマ脳炎、肉芽腫性髄膜脳炎、側頭葉
萎縮、脳腫瘍、水頭症等があるそうです。
ごんの場合は、上記症状は全てあてはまりました |
*診断方法
発生件数が少なく、また臨床症状の解析や系統だった病因に関する研究が行われていなかったが、近年の報告ではMRI検査、
脳脊髄液内のリンパ球の増加の確認が診断に有効とされている。
まだ完全な診断方法はないようです。MRIや脳脊髄液の検査でも分からず、死後解剖で分かった例もあるようです。また有効と
されている、MRIや脳脊髄液の検査は大学病院での検査となり、全身麻酔も施さなければならず検査自体にもリスクが生じるようです。
ごんの場合にはMRI検査で脳内の炎症がはっきりと認められ、パグ脳炎と診断されました。ごんのMRI写真はこちらです。
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*治療方法
パグ脳炎(壊死性髄膜脳炎)の場合には完治を目的とした治療は見つかっていない。すなわちこの病気にかかった場合には治療法はなく死を待つだけということになる。
この疾患の治療は、あくまでも症状に対する緩和的治療である。一般的には癲癇様発作を抑えるフェノバール、脳の炎症、免疫力を抑えるステロイド、免疫低下による感染を抑える抗生剤の投与が行われる。
パグの壊死性髄膜脳炎はその他の犬種の壊死性髄膜脳炎と異なり病気の進行が速く、薬の反応が悪いような印象を受ける。
壊死性髄膜脳炎には慢性型と急性型の二つに分類されていて、おそらくパグの場合は急性型のものが多いと思われる。
いずれにしても、壊死性髄膜脳炎の治療は、あくまでも症状に対する緩和的治療であり、本剤の投与は問題を解決するためのものではない。飼い主には各種の投薬を行うことで、生存期間は長くなるかも知れないし、変わらないかもしれないが、投薬によって生存期間が著しく延長することはないことも十分に理解してもらう必要がある。あくまでも、ステロイドやフェノバールなどの薬剤はQOLの改善が投与の目的な訳で、もし薬の副作用によって苦しんでいるのであれば、神経症状と副作用とのバランスを十分に考慮し投薬量を減らす事も考慮すべきである。
ごんの場合は、フェノバール、ステロイド、抗生剤、ビタミン剤等々、数多くの薬を飲んでいました。
(ごんの投薬履歴はこちら)
その結果、粘膜系の激しい疾患に悩まされました。結果的にはこの粘膜系の疾患がごん体力を急速に奪っていったようです。
この疾患はごんの死後に判明しました。薬疹の一種といわれている多形性紅斑という珍しい病気でした。発作を抑えるために
飲んでいたフェノバールに反応してしまったようです。もしもっと早くにこの病気が分かればあんなに苦しまなくて済んだのではと
思うと胸が痛いです。
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